転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「ちょっと意味が分かりません」
「どうせニートじゃん。悪い話じゃないと思うけど」
「いや、確かにニートですけど…」
秘書、は分かるとして。その後の、アレだ。何かがおかしい。
「恋人も…ですか?」
「うん」
彼の提案はあまりにも唐突だった。
一瞬からかわれているのかと思ったけれど、迷うことなく頷いた彼の顔は、真剣そのもの。
思わず言葉を詰まらせる私を余所に、彼はゆるりと口角を上げる。
「とりあえず俺ん家で面接する?」
「待ってください。さっき転生したい理由を話したら帰らせてくれるって…」
「気が変わった。てかこのまま放っておいたら、また何しでかすか分かんないし」
「何もしませんよ。真っ直ぐ家に帰ります」
「いや、危ないから俺が保護する」
「今はどちらかと言うとあなたの言動の方が危ないです。怪し過ぎます」
「俺は電柱に頭ぶつける紗良の方が怪しい奴だと思うけど」
「……」
なかなか折れない彼に、思わず深い溜息が出た。そんな私を見ても、彼は余裕の表情を浮かべている。この男、一体何を企んでいるのだろう。
さっき自由人は嫌いじゃないと言ったけど、この人は自由を通り越して頭おかしいと思う。
「そもそも秘書って何ですか。あなた一体何者なの」
「あ、そっか」
言ってなかったな。そう呟いた彼は、突然メガネを外し被っていたフードを取ると、乱れた髪を直すように軽く頭を横に振った。
フードがなくなったことにより、先程まで隠れていた真っ黒なツーブロックマッシュの髪型が露になり、そこから覗く肌は陶器のようで、思っていた通り綺麗な形をしていた目に、高い鼻。目を引くその容姿に、思わず息を呑んだ。