転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


逸生さんの言われた通り、早速あたたかいお茶と茶菓子を用意して応接室に向かう。

お茶が零れないようゆっくりと歩みを進め、応接室のドアの前で足を止めた私は、お盆を片手に持ち替え、息を整えてからドアをノックしようとした。

けれど、


「──ほんと、このキャラ疲れるわ」


応接室の中から聞こえてきた声に、咄嗟にピタリと動きを止めた。


「あと少しの辛抱ですよ」

「そうなんだけど…ねぇ、あの人本当に私を選ぶと思う?」

「大丈夫でしょう。あなたは誰よりも魅力的だし、さすがの九条でもさっきのリストを見て断るとは思えません」


──これは一体、誰と誰の会話?

私、部屋を間違えただろうか。確かこの部屋には、白鳥さんと、そのお連れ様が入っているはず。

でも、中から微かに聞こえてくる声はまるで別人のようだ。声のトーンから口調まで、全く違う。
この女性の声は、本当に花火大会で会った時と同じ人の声なのだろうか。


「確かに、あの大口クライアントのリストはなかなかの攻撃力よね。私でも最初見た時びっくりしたわ。でも、なぜだかあまり手応えを感じないのよね」

「確かに、なかなか手強い感じはありますね」

「明らかに私のこと怪しんでるじゃない。言葉にもいちいち棘を感じたわ。私が下手に出るからって調子に乗って、どの立場で言ってんのって感じだけど」

「おっしゃる通りです」

「やっぱあの女が怪しいわよね。秘書なんて嘘に決まってる。絶対あの女とデキてんのよ。てか私、あの後すぐに社長に報告したのに、なんでまだ彼の隣にいるの?」



──ねぇ、この人達は一体なんの話をしているの?


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