麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集
その3
ケイコ
矢吹先輩との話を終えた後、私は急いで着替えを済ませた
そしてグランドへ入ると、みんなはすでに練習を開始していたわ
でも…、テツヤが見当たらないや
「よう、おけい。先輩との話、済んだのか?」
「うん。なんかいい感じで話せたよ。多美にも色々気を揉ませてちゃったね」
「いや、とにかくよかった。でさあ…、テツヤなんだけどさ」
「何かあったの?アイツ、いないみたいだね…」
「うん…。さっきまでここで走ってたんだけどな…。女が乱入してきてさ、私らがいるのに、聞くに耐えない罵声を浴びせて泣き叫んでさ。テツヤ、半狂乱になってるその女の後を追いかけて、校舎へ戻ってったんだ」
「…」
私は言葉が出なかった
...
「…テツヤ、おけいには心配しないで欲しいってことだわ。大月さんも言ってたけど、なんかここんとこ、そういうの多いらしいんだ。まあ、”原因”がおけいだってのは、わかりきってるから、お前に言うのも気が引けるんだけどさ…」
そこへ、大月さんが私たちの前にやってきた
「横田さん、こんにちわ。ああ…、南部君の件、もう聞いたかな?」
「大月さん、お疲れ様!今、多美から聞いたとこだよ…」
私は元気にあいさつしたが、正直、心の中はどんより曇っていた
...
「実は昨日もだったの。2年の”彼女”らしき人がいきなり教室に入ってきて、ヒステリックに騒ぎ立ててね。でも、南部君は偉いよ。みんなの前なのに、あなたのこと本気だって、毅然と答えていたわ」
テツヤ…
「…まあ、南部君がモテモテなのをやっかんでる先輩の男子とかは少なくないけど、むしろ最近は”彼女軍団”の方に批判が集まってて、大半は彼に同情的だわ。いくらなんでもやりすぎだって、南部君を支持してる。だから横田さんは堂々としていればいいよ」
「ありがとう…、大月さん」
「じゃあ私、練習に戻るわね」
そう言って、小走りしながら手を振ってくれた大月さんの言葉で、曇りきった私の心には、わずかながら明るい陽射しが届いた気がした
...
「…彼女さ、この合同練習は自分が最初に言い出したことだからって、かなり腐心してたらしいよ。ウチら外部のモンに嫌な気分とかさせないようにって、テツヤと一緒にさ」
そうだ…、彼女はあの選抜駅伝の日、陸上部に入る宣言をしたんだよな
「特に、この合同練習の実現に尽力してくれたおけいには変な気遣いさせないようにって、お前のカムバック初日には全員に出席の確約とってさ…」
そう言いながら、すでに足の屈伸をしていた多美はにっこり笑った
...
「なにしろ、テツヤとのことでここに来るのが辛いんじゃないかって気にしていたよ、彼女。なあ、おけい…。わかるヤツはわかってるよ。それで、いいんじゃないかな。テツヤとおまえはしっかり結びついてる訳だし。ああ…、心がね(苦笑)」
「多美、お前の話にはいつも勇気が湧いてくるよ。さすが、南玉でバリバリやってるだけあるわ、はは…」
「おお…、ならよう、お前もそろそろその気になれ。一緒にバリバリどうだ?(爆笑)」
全く…、会うたびに”これ”だ(苦笑)
私は多美と一緒に3キロ走ろうと誘い、テツヤを待つことにした
...
でも…、今日の黒沼での合同練習は、今一つ気合が出なかった
どうしても、テツヤのことが気になってて…
その後、テツヤがグランドに戻ってきたのは、合同練習が終わりに近づいた頃だったよ
「テツヤー!」
「ああ、おけい…。心配ないからな。お前は普通にしてればいい。何も気にしないでいい…」
そうは言ってくれてるけど、やっぱりいつものテツヤとは違う…
何か、無理してるって感じだよ
「何にも力になれなくて情けないよ。私、テツヤの彼女なのに…」
「いいって。おけいと付合うって決めた時から覚悟してたんだし、こういうのは…。それに、週末お前とデートするまでには”決着”してるさ…」
そうだ…、週末は大事な一区切りの日になる
二人にとっての…
テツヤと映画見て、食事して、それで…
もうちょっとだ、もうちょっとだ…
私は自分にそう言い聞かせていたよ
何度も…
...
でも…、みんな、私に優しすぎるよ
テツヤだけでなく、多美も大月さんも絵美も、そして矢吹さんも…
逆に、そんな恵まれてる私のことを恨んだり、憎らしく思ったりしてる人たちだっているはずだよな…
矢吹さんは、そんな空気がマックスになっているからと言いたかったのだろうか…
...
「…明日の夜7時半、中央公園の噴水前でお願い。いいわよね?」
R子から自宅に電話がかかってきたのは、この前と同じくらいの夜10時過ぎだった
結局、時間と場所の確認だけで会話で終わったが…
まあ、約束だから行くけど、ちょっと今の気分だと正直おっくうだな
今日のこともあるし、週末のテツヤとのデートまでは余分なこと考えたくないんだよ
本当は…
ケイコ
矢吹先輩との話を終えた後、私は急いで着替えを済ませた
そしてグランドへ入ると、みんなはすでに練習を開始していたわ
でも…、テツヤが見当たらないや
「よう、おけい。先輩との話、済んだのか?」
「うん。なんかいい感じで話せたよ。多美にも色々気を揉ませてちゃったね」
「いや、とにかくよかった。でさあ…、テツヤなんだけどさ」
「何かあったの?アイツ、いないみたいだね…」
「うん…。さっきまでここで走ってたんだけどな…。女が乱入してきてさ、私らがいるのに、聞くに耐えない罵声を浴びせて泣き叫んでさ。テツヤ、半狂乱になってるその女の後を追いかけて、校舎へ戻ってったんだ」
「…」
私は言葉が出なかった
...
「…テツヤ、おけいには心配しないで欲しいってことだわ。大月さんも言ってたけど、なんかここんとこ、そういうの多いらしいんだ。まあ、”原因”がおけいだってのは、わかりきってるから、お前に言うのも気が引けるんだけどさ…」
そこへ、大月さんが私たちの前にやってきた
「横田さん、こんにちわ。ああ…、南部君の件、もう聞いたかな?」
「大月さん、お疲れ様!今、多美から聞いたとこだよ…」
私は元気にあいさつしたが、正直、心の中はどんより曇っていた
...
「実は昨日もだったの。2年の”彼女”らしき人がいきなり教室に入ってきて、ヒステリックに騒ぎ立ててね。でも、南部君は偉いよ。みんなの前なのに、あなたのこと本気だって、毅然と答えていたわ」
テツヤ…
「…まあ、南部君がモテモテなのをやっかんでる先輩の男子とかは少なくないけど、むしろ最近は”彼女軍団”の方に批判が集まってて、大半は彼に同情的だわ。いくらなんでもやりすぎだって、南部君を支持してる。だから横田さんは堂々としていればいいよ」
「ありがとう…、大月さん」
「じゃあ私、練習に戻るわね」
そう言って、小走りしながら手を振ってくれた大月さんの言葉で、曇りきった私の心には、わずかながら明るい陽射しが届いた気がした
...
「…彼女さ、この合同練習は自分が最初に言い出したことだからって、かなり腐心してたらしいよ。ウチら外部のモンに嫌な気分とかさせないようにって、テツヤと一緒にさ」
そうだ…、彼女はあの選抜駅伝の日、陸上部に入る宣言をしたんだよな
「特に、この合同練習の実現に尽力してくれたおけいには変な気遣いさせないようにって、お前のカムバック初日には全員に出席の確約とってさ…」
そう言いながら、すでに足の屈伸をしていた多美はにっこり笑った
...
「なにしろ、テツヤとのことでここに来るのが辛いんじゃないかって気にしていたよ、彼女。なあ、おけい…。わかるヤツはわかってるよ。それで、いいんじゃないかな。テツヤとおまえはしっかり結びついてる訳だし。ああ…、心がね(苦笑)」
「多美、お前の話にはいつも勇気が湧いてくるよ。さすが、南玉でバリバリやってるだけあるわ、はは…」
「おお…、ならよう、お前もそろそろその気になれ。一緒にバリバリどうだ?(爆笑)」
全く…、会うたびに”これ”だ(苦笑)
私は多美と一緒に3キロ走ろうと誘い、テツヤを待つことにした
...
でも…、今日の黒沼での合同練習は、今一つ気合が出なかった
どうしても、テツヤのことが気になってて…
その後、テツヤがグランドに戻ってきたのは、合同練習が終わりに近づいた頃だったよ
「テツヤー!」
「ああ、おけい…。心配ないからな。お前は普通にしてればいい。何も気にしないでいい…」
そうは言ってくれてるけど、やっぱりいつものテツヤとは違う…
何か、無理してるって感じだよ
「何にも力になれなくて情けないよ。私、テツヤの彼女なのに…」
「いいって。おけいと付合うって決めた時から覚悟してたんだし、こういうのは…。それに、週末お前とデートするまでには”決着”してるさ…」
そうだ…、週末は大事な一区切りの日になる
二人にとっての…
テツヤと映画見て、食事して、それで…
もうちょっとだ、もうちょっとだ…
私は自分にそう言い聞かせていたよ
何度も…
...
でも…、みんな、私に優しすぎるよ
テツヤだけでなく、多美も大月さんも絵美も、そして矢吹さんも…
逆に、そんな恵まれてる私のことを恨んだり、憎らしく思ったりしてる人たちだっているはずだよな…
矢吹さんは、そんな空気がマックスになっているからと言いたかったのだろうか…
...
「…明日の夜7時半、中央公園の噴水前でお願い。いいわよね?」
R子から自宅に電話がかかってきたのは、この前と同じくらいの夜10時過ぎだった
結局、時間と場所の確認だけで会話で終わったが…
まあ、約束だから行くけど、ちょっと今の気分だと正直おっくうだな
今日のこともあるし、週末のテツヤとのデートまでは余分なこと考えたくないんだよ
本当は…