麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集
その4
ケイコ



中央公園に着いたのは夜7時半ちょっと前だった

ええと…、噴水前っていったらここだよな

今さっきまでは明るかったが、急にうす暗くなってきたわ

数分すると、コツコツと、”複数の”ヒールらしき足音が聞こえてきた

「お待たせしたかしら、横田さん…」

その足音が止まると、R子だったわ

「私も今来たとこだよ。ああ、その人?陸上やってる先輩って…?」

「ああ~、横田さん、久しぶりー。あなたを待ってる先輩じゃなくてごめんよ」

その声の主は、公園内の街燈が照る角度まで進んで、私に顔を見せた

この人…

R子同様、中1の時にクラスが一緒だった、W子だわ!

「公園の入り口で偶然会ってね、W子と…。あなたとここで約束だからって言ったら、ぜひ会いたいってことでね、連れてきちゃったんだけどさ。うふふ…」

「ああ、そうなの…。しばらくだね」

私の2Mほど前に並んでる二人は、全くと言っていいほど、同じ表情で笑ってる

なんかヘンだな…


...



「あのさ…、その先輩って人、待ってるんじゃないの?早く会わせてよ」

「そうね。なら、行こうか…。すぐそこだからさ…」

R子は、暗くても手に取るようにわかる薄笑いでそう言ったわ

どうやら散歩コース脇の木々の間を抜けて行くらしい

私は、かなりゆっくりめに歩いている二人の後ろを、小さい歩幅で早歩きしてついて行った

すると‥

「ケイコ…、W子とあなたのこと話してたらさ、自然と中一の時の話題になったよ。でさあ…、キモい転校生のこと思い出したわ」

「そうそう…、転校初日にゲロ吐いてたキモイ女いたよな。タカコとかって名前だったかな。色白で、えらいクラかったわ。おお…、思い出したら背筋寒くなってきたよ、ハハハ…」

「ケイコ…、アンタ、あのゲロ吐き女には妙に親切だったよね。吐いたもん、一緒にかき集めてさ。クサくなかったか?アンタさ…」

「まあ、先生は感動してたわな、あん時。みんなも見習いなさいって。そう言われた時、アンタさ、どういう気持ちだったワケ?快感~ってか?ぎゃははは…」

なるほどね…

この二人、申し合わせ済ってことだ


...



「まあ、先生に気に入られて、鼻高々ってとこだったんじゃないの?あのねー、私、迷惑だったんだけど…!」

「そうだよなー。R子はあん時、保健委員だったっけ、確か…」

「ああ、そうさ!担任のセンコー、”保健委員なのに何やってるの!横田さんだけにやらせて!”とヌカしたわ。ふざけんなって!テメエだってゲロなんか、触りもしてねえーくせに!湯気立ってんだぞ、その”物体”。フン…、要は、アンタみたいなもの好きの偽善者がいると、みんなが迷惑しちゃうんだよ!」

「おい、ケイコ!アンタさ、昔からそうだったよな。ウチらと波長合わせてても、肝心なところで、いい子ぶってさ。要領いいよな…、ホント。なあ…、教えてくれよ、不器用な私たちにもさ。紅組とか、南玉とかのお偉いさんと昵懇になれるコツをよう…」


「…」




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