【短】だからもう、俺にちょうだいって。




それに今日はバレンタイン。
たぶん、この袋の中身はチョコレート。


……結多くんの気持ちを最優先にさせなくちゃダメだったんじゃないの、このみ。



「なんで俺がこのみちゃんから貰う前にあいつがこのみちゃんに渡してんだ。こんな意味不明なフライングとか許すまじ」



確かにそうだ…。

私まだ、結多くんにチョコを渡すことができてない。


やっと今年は今日という日に渡せると思っていたのに、このままだとまた悲しいバレンタインになっちゃう。



「ゆ、結多くん…!」


「おわっ、……なに、クソ幸せ。じゃない、どうしたのこのみちゃん」



自分から抱きつくことができるようになったのは、最近。

やっと身につけた技を駆使するように、私は勢いよく結多くんに飛びついた。



「……ごめん。ほんとは気が狂いそう」


「…うん」


「あ、このみちゃんに対してじゃねえよ?あの後輩に対してだからね?だって俺たちの噂ってわりと広まってたじゃん。
その上で渡してくるとか、あれはもう完全に確信犯だわ」



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