【短】だからもう、俺にちょうだいって。
そうなると、このチョコレートはやっぱり意味があって渡されたもの……なの?
もしそうならもちろん断る。
気持ちは嬉しいけれど、私には大好きな人がいるから。
「…このみちゃん」
すると、いつもの調子とは打って変わった弱々しい初めての声。
けれど背中に回った腕は苦しいくらいに抱きしめてくる。
「断ってくださいお願いします」
「…え、」
「こんな生中継は嫌すぎます。視聴率なんか取らせません、打ちきりです打ちきり。
でも分かるよ、あいつの気持ちだってひとつの気持ちだから、そこを捨てきれないこのみちゃんの優しいとこが俺の好きなとこでもあるわけだし?」
始まった結多くんの、饒舌(じょうぜつ)すぎる100の返し。
「でもさ、でもだ、もし明日からあいつが彼氏面してきたらどーするよ。
俺そしたら余裕で邪魔しまくるじゃん、ってなると、逆に俺が悪者的な立ち位置になるんだよこれ」
「そ、そう…なの…?」
「そうそう。少女マンガで言うと4巻あたりで唐突に出てきては読者に恨まれまくる悪女的なやつね。
いっちばん面倒なのは幼なじみ設定。あれクソ腹立たねえ?幼なじみだから何でも知ってます感よ。俺もちょー嫌い。そんで最終的に死ぬの」