【短】だからもう、俺にちょうだいって。




掴んだ途端に消えてしまいそうなのは私にとっての結多くんだ。

いつだってチョコレートみたいに溶けちゃいそう。


みんなから好かれて、人がいっぱい集まってきて、その中心にいるから。


私がわざわざ掴まなくても彼には特別な存在がいっぱいいるねって、ちょっとだけ悲しくなるときがある。



「これあれだな、俺が好きなこのみちゃんトップ10を紹介するべき?」


「えっ、いいよ…!もう十分なくらい言ってくれてるから…」


「だって伝わってねーじゃん。俺ほんと重いよ?たぶんぜんぶ知ったら、このみちゃんさえドン引くくらい」


「…引かないよ。そんなの言ったら私だって、いろいろ思ったりしてる…から」


「………」



チョコ、あとでもいいや。
お弁当も、今日はもういいや。

だからもう少しだけ結多くんを独り占めしたい。


教室に戻っちゃったら、彼は一瞬にしてみんなに囲まれてしまうから。



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