【短】だからもう、俺にちょうだいって。




私がその言葉をつぶやいたとき、目の前の動きは音もなく止まった。

なにかを待っているように止まって、そして期待を含んだものに変わる。



「なーに?このみちゃん」


「わ、私も…、結多くんが……だい、すき」



そういえば、言ったこと、なかったかもしれない。


まさか今になって理解するなんて最低だとも思ってしまった。


いつもいつも言ってくれるのは結多くん。

付き合う前も、付き合ったときも、付き合ってからも、言葉で伝えてくれるのは彼だったのだ。



「え、このみちゃん…?なぜ泣いちゃった……?」



優しく問いかけられて、私の涙はポタポタと余計に溢れてしまった。



「好きって伝えるだけなのに…、こんなに緊張して、ドキドキするんだね……、いつも伝えてくれて、ありがとう」



告白してくれたのも結多くんだった。

結多くんは恥ずかしさだったりとは無縁な人なんだろうって、ずっと勝手に決めつけてしまっていたけれど。


そんなことない、そんなことあるはずないよね。



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