【短】だからもう、俺にちょうだいって。
ガバッと抱きしめられると、私だけじゃない心臓の音もすぐ近くにあった。
「可愛すぎるってそれは、今のは。やべえ…、未来に完全なるチャペルが見えた。
似合ってないとか言われたら今日にでもバリカン買おうと思ってた数秒前の俺さよなら」
茶色いヘアカラーも、柔らかい髪質も。
パッチリと二重ラインが入った瞳ではなく、どちらかというと切れ長な目は、笑うと糸のように細くなる。
そんな幼さの残る無邪気な部分は、彼の最大の武器でもあって。
「あと……女の子のこと、名前で呼び捨てするの……、やだ、」
「……でも、“ちゃん付け”で呼んでるのはこのみちゃんだけっていう事実をご存知でしょうか。語っていい?この逆だからこその良さを語っていい?軽く1週間は寝かさねえけど。
……ちょっと今の表現はアレですね、うん、非常に素晴らしいですね」
私…だけ…。
結多くんのなかで、周りに対してと私に対してでちゃんと区別を付けてくれているということ。
「このみちゃーん、聞こえてる?とくに後半、俺は後半を推したいですね。…はは、自分の世界入っちゃったわ。あー、いとしい」
悲し涙に変わることはなかったものが流れていた頬が、そっと撫でられる。
こういうときの結多くんは同い歳のはずなのに、年上に感じるときがあって。