あさまだき日向葵

15.あさまだき

夏休みの最終日は塾もなかった。
「最後くらい、どっか行かない?」
と、塔ヶ崎くんが言ってくれた。私はその日に付き合ってってもう一度告白するつもりだった。

「うん、行きたい」
「……でも遅くなれないんだっけ?」
「うん、翌日学校だし、いい顔されないと思う」
みんなが言ってたみたいに裏工作なんて出来ないし、絶対に顔に出る自信がある。お母さん鋭いし。というか、私をよく見ているから。

「そっかあ、それはダメだな。聡子らしくないこと、となるとどうしよっか」
塔ヶ崎くんは、ちゃんと無理矢理に強行せずにこちらの事情を考えてくれる。

「もう、それいいよ。いっぱいしたし」

人生初の告白……とか!しかも明日もう一度するなんて!
だいたい、こうやって、男子、しかも好きな人と毎日のように一緒にいて、普通に話せるだけで、私にはすごいことだ。

「……朝、ならいいかな?」
「朝? 」
「そう。始発で海行こう」

……どうしよう、わくわくする。
まだ暗い時間でも朝だって言うと爽やかに聞こえる。
母親に言うと、驚きはしたけれど『朝なら』と言ってくれた。
何か言いたそうではあったけど、許してくれた。朝ってすごい。
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