あさまだき日向葵
「……聡子、あの先生のこと好きなんじゃない?」
「……あの、先生?」
「塾の、階段で話してた」
「……あれ以来会ってないし、私の授業担当してもらってないけど。何それ、全く意味わかんない」
「あの人に向ける顔、赤くなってたし、それに……俺と会う時はそんな服来てなかった。前髪だってそんな風にはしてなかったし、担当してない先生にしては、距離感おかしくないか?」
あの日の事を思い出してみる。眉間にシワが寄ってしまうけど、今は気にしている場合じゃない。
「ああ! 質問しにいったらあの人しかいなくて、前髪は本当に乱れてたから直してくれただけで……その、塔ヶ崎くんが来てくれてたから、ちゃんと……可愛く……といっても、地味な顔だけど。可愛く見えるように」
塔ヶ崎くんは、顎に指を添えて何か考えるそぶりをしている。
「何か、おかしくない? 何で俺のこと知ってんの?」
「花火大会の日に会ってるからだよ」
「……会ったっけ?」
今度は塔ヶ崎くんの眉間にシワが寄った。
海の音が静かに、でも規則的に鳴る。
どこかで鳥の声も聞こえていた。
「めぐ美さんと一緒にいた人、だよ」
今度は……私が……苦しくなって俯いた。
でも、『言って』って塔ヶ崎くんは言った。
だから私もちゃんと本当のこと、言わなくちゃ。
「あの二人、付き合ってないんだって。あの花火大会の時は、付き合ってなかったって」
……泣きそう。
「……あの、先生?」
「塾の、階段で話してた」
「……あれ以来会ってないし、私の授業担当してもらってないけど。何それ、全く意味わかんない」
「あの人に向ける顔、赤くなってたし、それに……俺と会う時はそんな服来てなかった。前髪だってそんな風にはしてなかったし、担当してない先生にしては、距離感おかしくないか?」
あの日の事を思い出してみる。眉間にシワが寄ってしまうけど、今は気にしている場合じゃない。
「ああ! 質問しにいったらあの人しかいなくて、前髪は本当に乱れてたから直してくれただけで……その、塔ヶ崎くんが来てくれてたから、ちゃんと……可愛く……といっても、地味な顔だけど。可愛く見えるように」
塔ヶ崎くんは、顎に指を添えて何か考えるそぶりをしている。
「何か、おかしくない? 何で俺のこと知ってんの?」
「花火大会の日に会ってるからだよ」
「……会ったっけ?」
今度は塔ヶ崎くんの眉間にシワが寄った。
海の音が静かに、でも規則的に鳴る。
どこかで鳥の声も聞こえていた。
「めぐ美さんと一緒にいた人、だよ」
今度は……私が……苦しくなって俯いた。
でも、『言って』って塔ヶ崎くんは言った。
だから私もちゃんと本当のこと、言わなくちゃ。
「あの二人、付き合ってないんだって。あの花火大会の時は、付き合ってなかったって」
……泣きそう。