魔法のいらないシンデレラ 3

「…瑠璃？」

ベッドに近付きながら小さく呼びかけると、瑠璃はゆっくりと顔を上げて微笑んだ。

「一生さん、すみれ」

髪をゆるく1つに束ね、ホッとしたように優しく微笑む瑠璃を見て、マリア様のようだと一生は思った。

なんと強く、美しい人なのだろう…
自然と涙が込み上げてくる。

「瑠璃、ありがとう。無事で良かった…」

涙で言葉が続けられなくなる。

瑠璃は手を伸ばし、一生の手をそっと握った。

「一生さん…」

一生がなんとか笑おうとすると、瑠璃も、ふふっと笑みを洩らす。

「赤ちゃん、頑張って生まれてきてくれましたよ」
「ああ、本当に良かった…。ありがとう」

もう一度一生に笑いかけると、瑠璃はすみれに手を伸ばす。

「すみれ、おいで」
「かあさま」

瑠璃は、ベッドの端にすみれを座らせると、愛おしそうに髪をなでる。

「すみれ、朝ご飯ちゃんと食べた？」
「うん！とうさまとたべたよ。かあさまのホットサンド、すごくおいしかった！」
「そう、良かった」
「かあさまは、だいじょうぶ？」
「ええ、だいじょうぶよ。ありがとう、すみれ」