魔法のいらないシンデレラ 3
しばらくすると瑠璃は、すみれ、と名前を呼んでベッドの端に座らせると、ちょっと待っててね、と言ってゆっくりベッドから下りる。

「瑠璃、大丈夫か?」

一生は、両手で瑠璃の身体を支えた。

「ええ、大丈夫」

瑠璃はベビーコットに身を屈め、赤ちゃんをそっと抱き上げた。

「一生さん」
そう言って、一生の腕に赤ちゃんを託す。

「わっ…軽い」
そう言いながらも、体中に力が入ってガチガチだ。

すみれの時にすでに経験しているのに、こんなに緊張するとは…

いや、2度目だからこそ、命の重さをより重く感じるのかもしれない。

これまでのすみれとの時間がどれだけ尊いものかを知っているからこそ、新たなこの命の尊さも、ひしひしと感じる。

(守っていかなければ、この子を。そして、すみれと瑠璃も)

一生は固く心に誓った。

やがて瑠璃は一生から赤ちゃんを受け取ると、ベッドにいるすみれの横に座った。

「いい?すみれ」

そう言って、手を添えながらすみれの膝に赤ちゃんを載せる。

「うわあ…」

赤ちゃんを抱きながら、すみれは嬉しいようなドキドキしたような、なんとも可愛らしい表情になる。

瑠璃は、そんなすみれに優しく微笑んでいた。
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