魔法のいらないシンデレラ 3
「へえ、じゃあ営業マンなんですね」
「そう、こう見えてね」
「いえ、だからこんなにも色々と気を配って下さるんですね。もう、至れり尽くせりですよ」
「そうかな?」

山下は、照れたように笑いながら、カレーを頬張る。

こんなにたくさん食べ切れないからと、小雪は山下に、何か食べていって下さいと呼び止めたのだった。

食べながら、他愛もない話をする。

山下は、小学校から大学までずっとサッカーをやっており、しょっちゅう捻挫をしては、先ほどのクリニックに行っていたと教えてくれた。

テーピングも、あの先生に教わったらしい。

「先生が、応急手当が良かったから、私のケガの治りも早いよって仰ってました。本当にありがとうございました」
「いやいや。良かったよ、俺のドジった経験が役に立って」
「うふふ、ドジったって…。さっきは先生に古いって言ってたのに」
「あ、バレた?俺もちょいちょい使っちゃうんだよな」

小雪はまたふふっと笑ったが、急にハッと思い出す。

「営業マンってことは、もしかしてさっきは、どこかに営業に行かれるところでしたか?大変!」

思わず身を乗り出し、足に体重がかかって、痛っ!と顔をしかめる。
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