魔法のいらないシンデレラ 3
「ほらほら、気を付けてね。大丈夫、仕事はもう終わってたから」
「え?だってあの時まだ、5時過ぎとかだったと…」
「うん。俺の部署、定時が5時なんだ」
「そうなんですか?会社の定時って、どこも5時とかなんですか?」

会社勤めの経験がない小雪には、その辺りの事が良く分からなかった。

「いや、定時が5時って早いと思うよ。昔は俺達も6時半とかだったんだけど、今の総支配人に代わった時に、5時になったんだ。おまけに残業も基本的に禁止。おかげで凄く働きやすいよ」
「そうだったんですか。今の総支配人…」

小雪は視線を落として考え込む。

(それって、瑠璃さんの旦那様よね?じゃあやっぱり、このヘラヘラ星人さんは、瑠璃さんと総支配人がご夫婦だってことを知ってるはず…)

お世話になった負い目からか、知らないうちに、ヘラヘラ星人に『さん』を付けてしまっている。

(言ってみようかな、ズバッと。瑠璃さんのこと、どう思ってるんですかって。手を出したらだめですからねって)

口を開こうとした時、逆に質問されてしまった。
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