うそつきな唇に、キス
問題は、そのお昼休憩に起こった。
「える、少しいいか」
「はい、なんですか?」
もともと、若サマがお昼休憩にわたしに頼み事をする、という時点でかなり異例のことで。
基本若サマは自分でしたがるし、やりたくないことは琴に丸投げだったから。
「これを表側の生徒会長に渡してきてくれ」
そう言って渡されたのは、一枚の白いプリント用紙だった。
それにさらっと目を通したのち、言う。
「……青楽祭って、なんですか?」
わたしの言葉に、琴と若サマ、そして睿霸はほんの少し呆れを滲ませたのち、はらりと苦笑を落としたのだ。
まるで、もう慣れた、とでも言うように。
「青楽祭っつーのは、この学校の文化祭みたいなもんだな」
「……文化祭、ですか?」
「文化祭っちゅーんは、せやなあ、端的に言うと夏祭り〜みたいナもんやな!」
「もっと詳しく言うと、劇とか、露店とか、生徒だけでイベントを主催する行事、だな」
「へえ……」
そんなものに馴染みなどあるわけがなく、物珍しいものを見るような目でプリントへ視線を落とし。
「……その護衛を、わたしたちがするんですか?」
青楽祭での黒棟の人間の配置と人員について、と書かれた見出しに、目を滑らせた。