うそつきな唇に、キス
めそめそと泣き真似をする睿霸になど目もくれず、琴はわたしの全身を一度じっくりと見下ろした。
「……確かに、怪我はなさそう、だな。着衣に乱れもないし。そもそもなんでこんなに遅くなったんだ?」
「えっと、白棟の方で何やら文化祭の準備が立て込んでいたようで、書類に目を通してもらうのに少し時間がかかりまして。あとはまあ色々あったんですけど、いちばんはわたしが睿霸を殺そうとしたのが原因ですかね……」
「へえ…………、…………」
ぱちくり、と一度目を瞬いた琴は、わたし、次いで睿霸へと目をやり。
顎に手を置いて、至極真面目な顔をして、言った。
「……実はここにいる喵様、幽霊だったりするか?」
「しないですね」
「側近くんまデ僕のこと殺そうとせんでくれる?!」
ぶつけた足とわたしに蹴られた腹部をさすりながらよろよろと立ち上がった睿霸に、自然と片手を差し出した。
「あの、また肩貸しますよ」
「僕をこんナにしたえるちゃんが、いっちゃん僕の身を案じてくれるておかしいやろ……」
「それはほんとにすみません……」
また謝りながら、肩を貸そうと睿霸の腰に手を回しかけた時、だった。
「─────える、」