うそつきな唇に、キス
短く、的確に。
いつもの抑揚ある声色ではなく、驚くほどの平坦さで。
その一言は、紡がれた。
「そいつらのこと、ころしたいから」
純粋なる、殺意。
否、殺意と呼ぶにはあまりに淡白で、けれどそこに〝ころす〟以外のなにものも含まれていないのだから、やっぱり殺意としか言い表わせる言葉が何も思いつかなかった。
「……い、きなり、ですね」
「……そうか?俺はずっとえるの家族の話が出た時から思ってたけど」
「そんなに前からですか?!」
全然ぽっと出の殺意じゃなかった。割とちゃんと煮詰めた殺意だった。
「で、でも、そんなに殺意漲らせても、ぶつける相手はこの世のどこにもいないので一旦しまってください……」
「は?なんで?」
琴から若干とばっちりの凄みを浴びながら、苦笑いをして、告げた。
あの日の地獄を。
「だって、全員、わたしがすでに殺していますので」
すべてが終わり、始まった日。
その象徴は、きっと、裏切りという罰と、地獄に似た鮮血だった。