うそつきな唇に、キス
「……だから、あの日。俺と若がえるに出会った時、えるから血の匂いがしたのか」
……ああ、やっぱり気づかれてたか。
琴が気づいているということは、つまり若サマも気づいていたということ。
でもまあ、これはある意味想定内。
気づいてくれていた方が都合がいい。
そう思って、わざと笑顔で肯定を返す前に、なぜか琴は、はあああああ、と深く長く息をついた。
「んだよ、それ最初っから言えよな、ばか」
「……なんか、安心してます?」
「まあ、ちゃんと死んでてくれて正直ホッとしたけど、……でも、えるの実の両親は生きてるんだろ?その不穏分子が消えない限り、安心しきれないところではある」
「不穏分子……」
……なんか、思ってたのとちがう。
若サマはともかく、琴と睿霸の反応が予想の斜め上もいいところを突き進んでる。
一片の曇りなく放たれたそれは、冷酷に、非情に。
きっと、人の心なんてまともにないとわかってしまった一言……だった、はずなのに。
どうして安心なんかするの。
どうしてわたしを蔑まないの。
……どうして、親を殺すというわたしに、笑いかけるの。
へんなの、へんなの、へんなの、……へんな、人たち。
……まあ、でもいい。
もう、種はまいたから。