うそつきな唇に、キス
独特な喋り方。
わたしが見てきた中では、一度も聞いたことのないイントネーション。
そのどれもにもう慣れていたから、驚くことなく睿霸の方を振り向いた。
「やかラさっき若くんみたいな男口調になっとったん?!」
「……さっき?」
わたしが白服の人たちに絡まれた一部始終を知らない若サマから、疑問の声が上がった。
ほんのり眉を寄せ、さらに不機嫌をはらんだ声音で。
そして、それに応えるように、睿霸はぺらぺらと渡り廊下でのことを話してしまった。
ひとつひとつ、なぞりながら。
わたしの口調を完璧に再現するという余計なこと付きで。
「そんで男口調になッたんやね………、って、ちょい待ち。そもそモ自分が男か女か判断つかん環境ってなんなん……?」
「あはは」
「それ笑って誤魔化セるやつやないと思うで、なあ側近く………、って、」
睿霸の質問を軽く笑い飛ばしたわたしを、流し目でやんわり咎めた睿霸は、口うるさい琴に賛同を得ようとした、が。
「どシたん、ふたりしてむずかしー顔して」
若サマと琴が、何やら眉間に皺を寄せて考え込むような顔をしていた。