うそつきな唇に、キス
「……ソらそうかあ。……っちゅーかそれやと、出会い頭にフルネーム名乗り続けて、その一年後にようヤっと苗字呼ぶようになった僕のこと、どんだけ覚える気なかったん……?」
「でも喵様はまだいい方ですよ……。俺なんて最初は語呂が似てるからゴキブリって呼ばれてて……。しかもそれが3年も続いて、ようやく苗字で呼ばせた時の俺の達成感ときたら……」
「うわあ……若くんソれはないわ」
……え、いや、え?
これ、話についていけないわたしが悪い、のかな??
どうして、わたしを絶対的に憶えるという、ある種確定事項じみた言葉を、スルーできるのだろう。
それも、若サマが言わないような、確信のような意味が秘められたものを。
「……というか、若が聞き覚えないなら、じゃあ俺のこの既視感は一体どこから来たんだって話に逆戻りするんですよね」
「えー、ジゃあさあ、口調若くんっぽいけ、どっかで若くんが似たようなこと言ったとかありそうやない?」
ひとりだけ置いてけぼりのまま、既視感探りは着実に正解へ近づいていく。