うそつきな唇に、キス
……が、琴が睿霸へ睨むような流し目を送り、心外だとでも言いたげに目を眇めた。
「そんな教育に悪そうなことを若がえるに言った暁には、俺が若をぶっ飛ばしてます。というか、若が言うにも人を選んで、…………、」
「側近くんのそれはもうホんまもんのお兄ちゃんなんよ……。あとこのふたりと偶然会う可能性っチゅーたら学校やけど、えるちゃん、」
「行ってないのでありえないです」
「よなア」
義務教育含め、学校という施設に通ったことはない。
興味もなかったし、わたしを存在しないモノにするには人目に触れさせないのがいちばんだったから。
そうして、突然押し黙り始めた琴と、他の代案を考える睿霸の思考に区切りをつけたのは、意外にもうんざりしたような顔をした若サマだった。
「……琴吹の既視感探りなど、後でいくらでもできる。いい加減無駄話を切り上げろ」
「へ〜イ」
「…………まあ、いいけど、」
まさに鶴の一声。
だらだらと脱線した話を続けていた琴と睿霸を、若干不服そうではあるけれどちゃんと本筋に戻した。
「……話を戻すが、えるは己の第二の性について、ひいては何かの機器により判別がつく情報については一切知らない、……という認識で合っているか?」
「はい」
「……わかった。次はえるだが、何か聞きたいことはあるか?」
「……そう、ですね」
そう言って、くるり、と。若サマに負けていた体を、唐突に真横、……睿霸の前方へと動かした。
突然わたしと向き合うことになった睿霸は、目をぱちくりさせていたけれど。
「睿霸、ちょっと外の空気とか吸いに行きたくなりません?」
意味深な問いかけ。
きっと、普通の人なら首を傾げてもおかしくないもの。
……けれど、睿霸は一度の瞬きで、にこりと完璧な笑みを形作り、席を立った。
「うん、ソやね。ちょうど喉乾いてきたし売店行ってクるわ〜」