恋の仕方、忘れました
どうやら彼は、私やお姉ちゃんのような顔が好みらしい。しかもまたコンビニでナンパしているのだから、彼の手口はワンパターンみたい。


もしかしてお姉ちゃんって男見る目ないのかな。とも思ったけれど、私も一度イノケンさんについて行ってしまってるし、私の口からそんなこと言えなかった。


さっきから微かに香る煙草のニオイは、彼が原因だったのか。裕真さんは煙草なんて吸わなかったからおかしいと思った。

ずっと感じてた違和感の謎が解けてスッキリしていると、お姉ちゃんはイノケンさんに「私の妹の希子だよ」と丁寧に紹介をしてくれた。

イノケンさんは私を一瞥してから「莉子ちゃんに似てるね」と苦笑を浮かべる。

けれど、少し寝癖のついた無造作ヘアーをぽりぽりと掻きながらお姉ちゃんを見据える目は、優しさを孕んでいるようにも見えた。

お姉ちゃんもとても幸せそうに彼を見上げていて、結構お似合いなのかな、とも思った。

……うん、そう思うようにしておこう。




「そういえば希子も話があるんだったよね?」




ふと掛けられた声に、ギクリとする。
私が今日ここに足を運んだ理由を、危うく忘れるところだった。




「えーっと……」



もう裕真さんの話をするつもりもないし、どうしたもんかと頭をフル回転させるけど、咄嗟に良い言い訳を思いつかない。

イノケンさんは何となく状況を把握しているからか、窓の外を眺めるふりをしてこっちを見ようともしなかった。なんて狡いやつだ。

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