恋の仕方、忘れました
そこでふと頭を過ぎったのは、彼の顔。
そうだ、お姉ちゃんと、それにイノケンさんに伝えておきたいことがあるんだった。
「お姉ちゃん、実はね……私も彼氏ができた」
改まってこんなこと言うのは何だか照れくさくて、小さな声で呟くと、それを耳にしたお姉ちゃんの顔はみるみる笑顔になる。
そして私に抱きつくと「おめでとう」と何度も繰り返しながらぴょんぴょん跳ねた。
「今度紹介してね」と涙目で訴えるお姉ちゃんに頷きながら、ちらりとイノケンさんに視線を移す。
今日もダボッとしたスウェットで壁に寄りかかりながら私と視線を重ねた彼は、目を細め、煙草に火をつけた。
まるで“よく出来ました”って褒められてるような気がして、私もイノケンさんににこりと微笑みかける。
正直イノケンさんにお姉ちゃんを任せていいのかまだ分からないけれど、彼が優しくて面倒見がいいことは知っていたから、今は彼を信じてみることにした。