恋の仕方、忘れました
「今度俺にお姉さん紹介しろよ」
「……勿論です」
この世についていい嘘といけない嘘があるとすれば、この件は恐らく前者だ。
お姉ちゃんの彼氏が、あの日一緒にホテルに行った人だということは、皆の為にも秘密にしておこうと思う。
また当分お姉ちゃんに会いには行けないな。と、肩を落とした。
「で、これからどうすんの」
「……主任のお部屋にお邪魔してもいいですか?」
何だか今は、無性に彼に触れたかった。
主任が残した珈琲を一気飲みしてからそう問えば、彼はそれに対して返事をせず「行こうか」とだけ零し、席を立つ。
私もそれに続き店を後にすると、主任の車の助手席に乗り込んだ。
あの日、初めて主任の部屋にお邪魔してから、今日で二度目。
オートロック付きのマンションの15階は見晴らしがよく、夜景が綺麗に見える。
前にこの部屋に来た時、この景色をとても気に入ってしまった。
でも今日は、それを楽しむ余裕を与えてはくれなかった。