恋の仕方、忘れました
トン、と私の身体を押した主任は、ベッドに私を押し倒す。

慣れた手つきでネクタイを外し、それを床に放ると、私を組み敷いたまま唇を重ねた。

何度も何度も、啄むようなキス。
さっき会社でお預けを食らっていた身体は、あっという間に熱を取り戻す。



「主任」

「うん?」

「ずっとこうしたかったです」



主任に言われた通り素直にそう零すと、彼は返事をする代わりに優しく目を細め、再び唇を塞ぐ。

それに凄く幸せを感じて、さっき泣いたばかりだというのにまた私の目からは涙が溢れ出した。

それに気付いた主任は、何も言わず指で拭う。



「お仕事で忙しいのは全然平気なんです」

「うん」

「毎日顔が見れるだけで贅沢だと思ってます」

「うん」

「でも主任いっつも仏頂面だから」

「それ貶してんだろ」

「私しか知らない主任に会いたくなるんです」



真面目に本音を伝えているのに、なぜだか主任はふはっと声を出して笑う。

笑うとこじゃないんですけど?と怪訝な顔をするも、滅多にそんな笑い方をしない主任が珍しくてつい食い入るように見つめてしまう。



「ずっとずっとこうしたかったです」

「うん、俺も」



もうその言葉だけで十分。

主任と同じ気持ちってだけで、明日から強く生きられそう。
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