恋の仕方、忘れました
…───と、その時。
ブブ、とポケットの中のスマホが震えたのが分かった。
課長の目を盗みながらこっそりと画面を覗けば、そこには愛おしい人の名前が。
“このバカ”
……内容は、怒りをにおわせたものだけど。
寧ろ私も“主任のばーか”と思ってますけど。
だけどきっと、これは課長の隣に座った私への説教で。それと同時に、ヤキモチを妬いているってこと。
“可愛いですね”
“ふざけんな”
今の今までこの人に腹を立てていたはずなのに、少しメッセージのやり取りをしただけで口元が緩んでしまう私はだいぶチョロい女だと思う。
“主任も浮気しないでくださいね”
“帰れるなら帰りたい”
“同じくです”
ここにいる皆、こんな主任を知らないのだと思うと優越感が半端ないよ。
“今日は一緒に帰るよな?”
一緒にっていうのは、きっと主任の部屋においでってこと。
皆の前で堂々と一緒には帰れないけれど、この時間を乗り越えれば主任とイチャイチャ出来るのかと思うと、課長の隣も平気な気がしてきた。