恋の仕方、忘れました
「主任、近くで見るとより美しいですね」
「酔った主任と話してみたい!もっと飲んでください!」
「主任がいるだけでお酒美味しくなる~」
「参加してくださってありがとうございます」
次々に飛び交う黄色い声。
予想通り、主任は女性陣から総攻撃を受けていた。
勿論、主任は一言も言葉を発しない……のかと思いきや、
「色男だわ~」
「ありがとうございます」
お局の褒め言葉に反応している彼の声が鼓膜を揺らし、思わず耳を疑った。
「成海?」
「……え、あ、課長何でしょう」
後ろの会話を聞いて、目を見開いたまま固まっていた私は課長の声ではっと我に返る。
慌てて貼り付けたような笑みを浮かべてみたけれど、意識は主任に持っていかれたままだ。
「写真撮らせてもらってもいいかしら?」
「……あまり得意ではないですけど」
いや断ってよ!もしかして酔ってんの?!
眉間に皺を寄せながら盗み聞きを続けていれば、課長が心配そうに私を見てくる。
その視線に気付いてはいたけれど、私の心はそれどころではなかった。