恋の仕方、忘れました
「あ、すみません。一人でべらべらと」

「全然いいよ。気にしないで」



寧ろもっと聞きたいくらいだし、と言いたい気持ちをぐっと堪えて、注いでもらったお酒を口に運べば森岡君が透かさずまた注いでくる。



「森岡君はすごいね」

「え?俺っすか?」

「うん。若いのにしかっりしてるし、よく回りを見てる。主任を尊敬してるだけあって行動に表れているっていうか、森岡君も主任に負けないくらい頼もしくなると思う」

「え、えぇ…」



私が正直に褒めれば、森岡君の表情が分かりやすく崩れる。

少し頬は赤くなって、逸らされた視線を見て照れているのだということが伝わってきた。



「俺なんて全然。まだ勉強の途中というか」

「そうやって何でも吸収しようとしてるのが偉いよ。サボろうと思えばいくらでもサボれる世界だけど、森岡君の成績はどんどん上がっていく一方だし」

「た、たまたま運が良かったんですよ」

「運も少なからずはあるかもしれないけど、全部ひっくるめて森岡君の実力じゃん」

「成海さん、褒めすぎです」

「そう?じゃあお酒注いでくれたお礼ってことで」

「そういう事ならどんどん飲んでください。いくらでもお注ぎします」



森岡君はそう言うと、徳利を手に取り私に見せつけてくる。
その無邪気な笑顔が可愛くて、つい「ゆっくり飲ませてよ」と破顔すれば



「えっ、」



急に森岡君が目を丸くして私を見てくるものだから、びっくりして私まで「え?」と声を漏らしてしまった。

< 164 / 188 >

この作品をシェア

pagetop