恋の仕方、忘れました
「ここまで来て仕事の話するとか、アイツは仕事しか脳がないんか」
課長はガハハと声を上げて笑いながら、俺と楽しく飲もうと目尻を下げながら声をかけてくる。それが不愉快で仕方がない。
普段主任に仕事を押し付けているくせに、偉そうにしている彼に苛立ちを覚える。けれど、それよりも苦笑いを浮かべることしか出来ない自分に一番腹が立つ。
「だからアイツは結婚も出来ないんだよ。顔だけ良くても貰ってくれる女はいないんだよなー」
ただの悪口ともとれるそれに、カチンと何かが切れる音がした。それでも、私は膝の上でぎゅっと拳を握ることしか出来ない。
でも、いま彼は酔っ払ってるし。一言…一言でもいいから何か言い返したもいいかな。
そう頭の中で自分に問いかけて、いや落ち着け自分、と再び心を落ち着かせようとしていた、その時。
「成海さん、こんなとこまで来て課長に媚び売って、ほんと嫌な女よねー」
後ろから聞こえてきた声に、私の思考は停止した。
「さっきの主任に対する態度も酷くなかった?ちょっとくらい仕事の話したっていいじゃないね?課長が肩を持ってくれたからって、いい気になっちゃって」
それはよく聞き慣れた声で、この人が私の悪口を言うのは日常茶飯事で。
今更この人に何を言われたって何とも思わないけれど、それでも今日は、主任に直接私の悪口を言っていて。
それに凄く、ショックを受けてしまった。