恋の仕方、忘れました
「お陰で最悪な飲み会になった」
「ご、ごごごごめんなさいです」
「そんなんで許すと思う?」
「お、おおおお思わないですけど許してほしいです」
「……」
顔の前に手を合わせて、必死に謝罪する。
それを冷ややかな目で見てきたかと思えば、またぐんと距離が縮まる。
「ひぅっ!」
そのまま顔を近付けてきた彼は、私の耳を甘噛みした。びっくりした私からは、変な声が漏れる。
慌てて口に手を当てるけれど、彼はまだ離れてくれない。
「今日一緒に帰るって言ったよな」
「……返信は、してな」
「帰るよな?」
「はい帰ります」
耳元で問いかけてくる主任の表情は見えないけれど、声だけで圧をかけられているのが分かる。
今の私に拒否権なんかなく、渋々頷けば再び耳元にキスを落とされた。
お酒が程よく入っている私の身体は、それだけで腰が抜けそうになる。それを透かさず支えた彼は「この酔っ払いが」と、また小さく舌打ちをした。
「マジでお前、今日説教な」
「ひぇー」
「とりあえず今すぐあのクソハゲに気分が悪いから帰るって言ってこい」
「い、今すぐですか?」
「これ以上あそこに置いとくわけないだろ」
「ひぇー」
「俺も仕事があるからって言って抜けるから」
「ふたりで同時に消えたら怪しまれますよ」
「それならそれでいい」
「ひぇー好きー」
「いいからもう黙って。さっさと行ってこい」
鬼畜な彼は、余韻も残さずあっさり身体を離すと、容赦なく私の背中を押してくる。
「もしこの後あのクソハゲに指一本でも触れられたら、説教だけじゃ済まないから」
「それってヤキモチですか」
「……お前なぁ、」
「行ってきます!」
主任の眉間に皺が寄ったのが分かって、急いで建物の中に避難した。