恋の仕方、忘れました


─────…



「えっと、あの、主任…」

「なに」

「これは、その、どういう……」

「どうって、説教するって言っただろ」

「……」



あの後、課長を上手く誤魔化して何とか脱出した私は、居酒屋から少し離れたコンビニで主任と落ち合い、彼の部屋に帰ってきた。

その道中、彼はいつも以上に静かだったことに怯えつつも、ただ少し拗ねてるだけだと思ってた。


勿論、説教をされる覚悟は出来ていた。

けれど恋愛経験の浅い私は、彼氏の“説教”=イチャイチャというイメージがあったために、その内容はアレがいつもより少し意地悪なだけだと思ってた。


それなのに。


部屋に入るなり腕を引いて私を寝室まで連れていった彼は、そのままベッドの上に私を正座させた。


なぜ正座?と思ったけれど、何となく彼の表情が怖かったので、言われた通り正座をすれば、向き合う形で胡座をかいた彼は頬杖を付きながら鋭い視線を送ってくる。


そこには人一人分の間隔が空いていて、決して彼の胸に飛び込むシチュエーションではなかった。


だから気付いた。

これはTL漫画や小説に出てくる“説教”ではなく、甘さなんて微塵もない、本気の説教だということを。


それに気付いた時には、無意識に「この度は粗相があったことを深くお詫び申し上げます」と頭を下げ謝罪していた。
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