恋の仕方、忘れました




それからは、毎日は残業しないにしても何日かに一回は遅くまで残って、主任とふたりになる口実を作った。

主任も出張があったりで忙しそうにしてたから、あまり負担にはならないように気をつけながら。


やっぱり主任は他の社員がいる時は話しかけてこないし、無愛想なのは変わらない。
たまに目が合ってもすぐに逸らされた。

それなのに、二人きりになると急にお喋りになる。
まぁお局達の前で仲良くしようものなら、会社中にあることないこと流されそうなのは主任も分かっているのだろう。
だからこれくらいの距離感がベストなのだ。


きっと社内でこの主任を知ってるのは私だけ。
それが嬉しくて堪らなかった。


そんな彼に惹かれそうになるのは当たり前で、でも主任は私がまだ祐真さんを好きだと誤解してて、それに主任には彼女がいるはすで。

だからこれ以上は……と、ストップをかけようと思うのに、気付けば主任を目で追っていた。


勿論あの日以来主任が私に触れてくることはない。
それなのに、私はあの夜の出来事がずっと忘れられないままでいる。




祐真さんはというと、あれから何度か電話を掛けてきたけれど一度も出ていない。
何を考えているのか分からなくて、不信感が募るばかりだ。

もしかしたらお姉ちゃんと上手くいっていないのかもと思ったけど、たまにお姉ちゃんと連絡を取り合っても自分からそんなことを聞く勇気はなかった。
卑怯なのは分かってるけど、私が二人をダメにしているかもしれないという現実を知りたくなかったから。


いつかお姉ちゃんに謝ろうと思うけど、もう少し時間が欲しかった。

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