カラフル
 暑さも和らぎ、紅葉の季節が近付いた。
 十月最終の日曜日、特にやることもなく、俺は部屋の緑をぼんやり眺めていた。
 そろそろたー子が来る頃だろうか。

 あれから、朝倉の言葉がずっと気になっていた。
 もしかすると、もうたー子に告ってたりするのかもしれない。朝倉はあの見た目もあって、自分にかなり自信を持っていそうだから、行動に移すのが早そうな気がする。付き合ってるなんてことは多分ないはずだが、朝倉とたー子が恋人同士になったら、たー子と俺の関係はどうなるのだろうか、なんて考えてしまう。
 朝倉はいい奴だが、たー子と恋人同士になるのは、なんとなく嫌だった。相手が朝倉じゃなかったらと考えても、やっぱり嫌だ。

 今日はもう来ねぇか……。
 俺は窓を開けて夕日なんか眺めて、柄にもなくおセンチな気分に浸る。
 たー子は俺のことをどう思っているのだろうか。
 何故だか無性にたー子に会いたくなった。

 翌日、たー子を捕まえて食事に誘った。
「二人で?」と、たー子は不思議そうな顔をしていたが、すぐに表情を緩め「オッケー」と軽い返事をした。
 定時に会社を出ると、既に待っていたたー子が「お疲れ~」と笑顔で駆け寄る。
「おう、お疲れ」
「どこ行く?」
「特に決めてねぇんだけど」
「じゃあさぁ、行ってみたいお店あるんだけど……」
「じゃあそこにしようぜ」
 たー子の頬が夕日に染められて、すげぇ綺麗だ。
 ただ駅に向かって他愛もない話をしながら歩いているだけなのに、何がそんなに楽しいのかと思うくらいに、たー子は弾けるような笑顔を見せる。
 到着したのは、たー子にしては珍しい静かで落ち着いた感じの店だった。
 いかにも女が好きそうな、デートにぴったりな感じの店だ。
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