先生の愛が激重すぎる件
「大丈夫ですよ。遊んでいる人ほど、落ち着くのも早いですよ。たまにずっと遊んでいる男性もいますけど、おそらく荒木先生は前者かとおもわれます。よかったですね、久保先輩」

 ギョッとして彼女を見た。

院内ではいつも通り医者と看護師の関係を崩すことはなかったはずだし、外でのデートはまだしていない。

通勤時間も違うから二人でいるところを誰かに見られるはずもない。

「どうして知ってるの……?」

 つい、聞いてしまった。

「ああ、やっぱりそうなんですね」

 にこりと微笑まれ、カマをかけられていたのだと気付いた。サッと血の気が引いていく。

野原さんは新人の中でも仕事ができる方で患者さんの変化にもよく気が付く子だ。見た目は今どきの少しほんわかした感じの女の子だけれど、中身はしっかりとしている。

その観察眼が自分にも向けられていただなんて、夢見も思わなかった。

「ううん、違うよ?」

「安心してください。誰も言いませんから」

「ラウンドしてきます」と野原さんは言って、ナースステーションから出ていってしまった。


「――で、野原さんにバレちゃったというわけか」

 帰宅後私は荒木先生に昼間の出来事を話した。

「そうなの。ごめんなさい……迂闊だった」

「玄関先で待ってるから、何事かと思ったよ。しかも、豪勢な夕飯まで作ってさ」

 先生はビールを飲み干して「ははは」と笑った。

「笑い事じゃないですよ」

「なんで? 別にいいじゃん。俺たち悪いことしてるわけじゃねえし、あの子誰かにべらべら喋るタイプにもみえねえし。それよか、極上の女と付き合ってるかぁーいいこと言うな野原さん」

言いながら先生はダイニングチェアから立ち上がり、私の後に立つと背中から抱きしめた。

「なあ明日美、あのアパートいつ引き払う?」

「今月中に管理会社に連絡しようとおもってます」

 もしかしたら先生と別れるかもしれないと思っていたから、保険代わりにアパートの退去連絡を引き延ばしている。

でも一週間暮らしてみてこの先も続けていけそうな気がしていた。

「そう。了解」

 いいながら先生は顔をほころばせる。心の顔の筋肉が直結しているんじゃないかと思うほど分かりやすい。

「でも、アパート引き払っても、先生が浮気したら速攻で出ていきますからね」

< 15 / 115 >

この作品をシェア

pagetop