先生の愛が激重すぎる件
久しぶりに夕ご飯を食べてイチャイチャしたいな、なんて思っていたから余計にガッカリしてしまったのだけれど、だからと言ってこんな顔で先生に『仕事頑張れ』だなんて嫌味にしか聞こえない。

――……最低。

自己嫌悪に襲われて、憂鬱な気持ちで家路についた。

シャワーを浴びて部屋着に着替えるとソファーに寝転んでテレビをつける。昼のワイドショーは芸能人のスキャンダルを面白おかしく取り上げている。

「くだらない」

 ここにいる人たちは人に誇れるような恋愛しかしてこなかったんだろうか。少なくとも私には他人の恋路をとやかく言う資格なんてない。

 ハッとして目を開くと、夕闇が部屋の中まで入り込んでいる。なにも掛けずに眠ってしまっていたからか、体はすっかり冷えていた。

「寒っ~」

 二の腕をさすりながら部屋の明かりをつけ、お湯を沸かすとコーヒーを淹れた。

マグカップに注ぎ、ふうふうと冷ましながら飲む。

いつもと同じコーヒーのはずなのに、どこか味気なく感じる。いそいで二杯目を入れ直し、保温の効くタンブラーにいれた。

冷蔵庫を開け、有り合わせの材料でお弁当を作ると病院粋のバスへ飛び乗った。

会えない会えないって嘆く暇があったら自分から行動すればいい。

 病院に着くと通用口から院内へ入り、医局の前まで来た。

先生を呼び出してもらうつもりだったのに、いつも入り口にいるクラークさんはもう帰ってしまったらしい。

「……どうしよう」

 電話で呼び出そうにも、スマホを部屋に忘れてきてしまっていた。病棟へ行って内線電話をかけるのが手っ取り早そうだけれど、夜勤のスタッフが変に思うだろう。上手い言い訳が見つからない。
 
「仕方ないか」

 私服で医局内へ入るのは気が引けたが、これ以上ここに突っ立っているのも嫌だった。
意を決して電子キーを解除してドアノブに手をかけた。

すると先にドアが開き中から見知った顔が出てくる。

「高木先生!」

 ラッキーと思った。高木先生なら余計な詮索もしないし、噂を立てたりもしないだろう。

「驚いた。久保さんか」

 突然声をかけたからか少し驚いたような顔をする。けれどすぐに真顔に戻ってしまった。イケメンでポーカーフェイスが張り付いているような先生も驚くことがあるようだ。

「突然すみません」

「いえ。どうしました?」

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