先生の愛が激重すぎる件
それから数か月後、高木先生が病院を辞め大学病院へ戻ってしまった。
外科のエースであった彼の存在を失ったことは外科、いやこの病院にとって大きな損失であることに間違いはないだろう。
後任の医者は来たものの、高木先生ほど仕事ができるわけでもなく(これが普通なのだが)結果として今までよりも業務量が増えた。
おかげで数年ぶりに医局で寝泊まりする生活が続いている。
「ねえ、正臣。今度いつ休める?」
病棟の廊下で明日美にそう聞かれて俺は言葉に詰まる。
「来週の木曜とか、かな」
といっても休める確証はないが……。
「木曜? 私日勤なんだけどな」
最近明日美と一緒に休日を過ごすことが出来なくなっていた。それはお互いにつらいことではあるが、仕事なのだから少しは理解して欲しいと思ってしまう。
だからつい、口調が強くなってしまった。
「仕方ないだろ! 最近オペ件数も増えてるんだから。それは明日美も分かってるよな」
そう言った途端、明日美がものすごく悲しい目をして顔を背けた。
「そうだね……ごめん。でも来月の14日は空けておいてよね」
小さな声でそう言って、俺に背中を向けて歩き出す。
「お、おい、明日美。待てよ……」
引き留めようとした。けれど、引き留めても状況は変わらない。俺が休めるわけでもなく、明日美が満足する答えを与えられるわけでもない。
そんなことを考えているうちに明日美はナースステーションへと戻ってしまった。
院内で顔を合わせているしコミュニケーションはとれている。そう思っていたのは俺だけだったんだろうか。
女心は難しい。