先生の愛が激重すぎる件
「はい。ありがとうございます。ツアー、頑張ってくださいね」

「うん。頑張る。じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

 鷹藤さんを見送ると、私はヴェガを散歩に連れいった。というより、私が散歩されているような感じがする。お気に入りのルートなのかまるで案内をするように細い路地をすいすいと進んでいく。

「ウォン」

「ん? どうした」

 ヴェガが立ち止まったのはオープンテラスのあるカフェの前。白いレトロな倉庫風の建物で、アンティーク調の椅子やテーブルはそぞれがとても個性的なのにもかかわらず見事に調和していた。

「ここに入るの?」
 そう尋ねると私を引いて店の入口へと歩きはじめる。

「待ってよ、ヴェガ。ここって入っていいお店なの?」

 ペット同伴OKのカフェじゃなかったら店側に迷惑がかかる。私は急いでリードを引いた。けれどヴェガは中へ入っていってしまう。

「いらっしゃいませ」

 

「すみません。ここって--」

 ペットOKですかと聞こうと思ったが、

「おや、ヴェガ? って、あれ? 今日は琉加くんと一緒じゃないのか」

 店のオーナーらしき中年の男性はヴェガに連れてこられた私を見て少し驚いたようにそう言った。

「あなたペットシッターさん?」

 白髪交じりの口ひげを触りながら聞く。

「まあ、はい。そんな感じです。この子の飼い主が家を留守にするので代わりにお世話をすることになりました」

 私がそう説明すると男性は思い出したように頷いた。

「ああ、そういえば全国ツアーが始まるって言ってたな。それより、ヴェガ。琉加君以外に懐かなくて困ってるって聞いてたけど、いい人が見つかってよかったな」

 返事をするようにヴェガは「ウォン」と鳴く。

「そうなんですか、鷹藤さん以外に懐かないんですか……知らなかった」

 はじめて会った時から人懐っこい子だと思っていたけれど、どうやらそうじゃないらしい。私のことを気に入ってくれたということだろう。ヴェガのことがさらにかわいく思えてくる。

「コーヒーでも飲んでいかれますか?」

「はい。ヴェガはいつも何を?」

「ヴェガはいつも水だけですよ。すぐにお持ちしましょう」

「ありがとうございます」

 銀のトレイに入れられた水をヴェガは嬉しそうに飲み、私はその様子を写真に撮って鷹藤さんへ送った。

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