先生の愛が激重すぎる件
一日一度は送るようにすれば鷹藤さんも安心して仕事に専念できるだろう。

そうこうしているうちに陶器のカップに入ったコーヒーが運ばれてくる。

「どうぞ、ダンデライオンです」

「いただきます」

 私は運ばれてきたコーヒーを一口すする。なんとも不思議な風味がした。
 
 「お口に合いませんか?」
 
  そう聞かれて私は慌てて首を横に振った。
 
 「あ、いいえ。でもこれ、コーヒーなんですか?」
 
 「正確にいうと、ハーブティーですね。タンポポコーヒーと言ってノンカフェインで胃腸にも優しいんですよ」
 
  まるで私の体調不良を言い当てられた気がしてどきりとする。最近胃の調子もよくないし、何となく体がだるいのだ。
 
 きっと先生と別れて気持ちが落ち込んでいるせいだろう。
 
 でもようやく部屋も出ることができたし、気持ちを切り替えていかないといけない。そんな風に考えていたのだけれど――。
 
 数日後、出勤した私は荒木先生に呼び出された。
 
普段あまり使われていない面談室に入ると先生は内鍵をかけた。
 
 「話ってなんですか?」
 
 「昨日帰ってみたらこれが置いてあった」
 
  先生は白衣のポケットから部屋のカギを出して私の目の高さにぶら下げた。
 
 「それに、俺がプレゼントしたものもすべて置いてあった……」
 
  先生の声が震えていた。これ以上彼の顔をみていられなくて、私は視線を床に落とす。そして静かに頭を下げた。
 
 「今まで住まわせてくださってありがとうございました」
 
 「もうやり直せないのか……俺たち」
 
 「はい」
 
  私ははっきりとそう口にした。
 
  先生が仕事をセーブしない限りよりを戻しても同じ結果になる。でもそれは無理だろう。私が出てったことも数日間気が付かなかったようだし。
 
 「でも俺、これからは仕事もだいぶ減るし明日美との時間――」
 
 「……ごめんなさい」
 
  先生の言葉にかぶせてそういうと、まるですべてを吐き出すような深くて長いため息を吐いた。
 
 「そうか、分かった。幸せにしてやれなくてごめんな」
 
 「私も、いい彼女になれなくてごめんなさい。これからは同僚としてよろしくお願いします」
 
 私は逃げるように面談室を出た。悲しむ資格なんてないのに涙が込み上げてくる。
 
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