君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
一人で帰る道はなぜか無性に寂しく感じた。

中学3年以降、チカと帰らなくなってから一人で帰ることには慣れていたはずなのに。

なぜだろう、まだ1週間も経っていないのに。
暖と一緒に話した時間。

そんな少しだけで一人で帰ることがこんなに辛く感じてしまうなんて。

私はやっぱり弱いなと思う。

そんなとき、何かが私の頭にのる感覚を感じる。
なにか触ってみると、それは桜だった。

上を見ると、桜の木がある。
下を向いて歩いていたせいで全く気付かなかった。

ここは、暖と出会った場所だ。
私がチカとのことを思い出して、一人で泣いていた日。

あの時のことを思い出す。綺麗な人だと思った。優しくて、見ず知らずの私なんかに声をかけるなんて同時に変わった人だと思った。

まさか次の日彼が転校してくるなんて思いもしなかったけれど。

でも結局こんなことになってしまうなんて。

明日からどうしようか。
暖とは話さない方がいいだろう。

女子たちが暖に危害を加えたりすることはないと思うがこれ以上私と関われば暖も目立ってしまう。

まぁ最初から暖は目立っていたけど、それは人気者としてだ。
私のは悪目立ちで暖に悪い影響を与えてしまうだろう。

そんなことは絶対にしたくない。
暖に傷付いてほしくない。

私はそう心に決意を込めて家に帰った。

「ただいま」と誰もいない部屋に返すが「冷、おかえり」と声が返ってくる。
私は驚いて身構えてしまったがひょこっと顔をだすお父さんがそこにはいた。

「あれ、お父さんか。今日はやいね」と返すとその日はたまたま仕事が早く終わり残業もなかったそうだ。

お父さんの顔を見ると何だかほっとする。
今日お父さんが早く帰ってくれていて良かったと思う。

学校で力を抜けなかったせいか、その日は家が
天国のように思えた。
< 40 / 156 >

この作品をシェア

pagetop