サイコな機長の偏愛生活



深夜二時過ぎ。
連日対応に追われ、まともに食事すらとってない日が続き、さすがに疲労感が拭えなくなって来た。

玄関を開けると、相変わらず彩葉の靴が無い。
無意識に溜息が漏れ出した、その時。
視界の奥に灯りが見えた。

「彩葉っ!!」

リビングドアのすりガラスから漏れる灯りに、一瞬で胸が早鐘を打つ。

勢いよくリビングドアを開け中に駆け込んだ、次の瞬間。
ダイニングテーブルの上に置かれたものを視界に捉え、心臓が抉られた気がした。

テーブルの上に彼女からの置き手紙がある。
その手紙の上に、……婚約指輪も。

置き手紙の内容に衝撃が走る。

体調を崩して、治療に専念していると記されている。
しかも、『とある場所』とだけ書かれていて、今どこにいるのかは明記されていない。

指輪を置いてまでして、俺の元を離れようとした彼女。
一体、何があったのだろうか?
体調を崩してと書いてあるが、一体どんな病なのか……。

深夜二時という時間が、足枷になる。
これが日中なら、今すぐ勤務先の病院に電話をかけて確かめる所だ。

すぐさま彼女に電話をかけるが、やはり繋がらない。
何通も送ってあるメッセージが既読にもならず。

彼女はどんな思いで、この手紙を書いたのだろうか?

彩葉、お前は今どこにいるんだ……。



「昨日の朝八時過ぎからの画像を見せて下さい」

マンションの管理室へと駆け込み、彩葉が帰宅した様子を確認する。
隈なく画像を確認していると、午後八時過ぎに玄関ドアを開ける彼女の姿を捉えた画像を見つけた。

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