サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
モニターの確認に二時間ほどかかり、自宅に戻ったのは午前四時過ぎ。
再び戻ったダイニングで立ち止まる。
仕事柄、彼女が指に嵌められないのは承知していたが、こんな形でテーブルの上に置かれるとは思いもしなくて。
怒りと焦りと悔しさが込み上げて来る。
俺は何をしてるんだ。
彩葉にこういう決断をさせること自体、大問題。
いつだって俺の隣りで。
いつでも安心出来て。
誰よりも幸せにすると誓ったのに。
元はと言えば、俺があの女に付け入る隙を与えてしまったのがいけないんだ。
酒井が言うように、俺があの女を『野放し』にした。
彩葉という絶対的な安心材料があったために、紳士的な俺になっていたようだ。
元々はあんな生ぬるいやり方なんてしない俺だったのに。
『サイコ』だと周りから陰口を叩かれているのは知っている。
強迫性障害を患うようになって『サイコ』と言われるようになったんじゃない。
それよりももっとずっと前から、俺の性格は破綻してる。
大企業の跡取りとして厳しく育てられ、常に優秀であり続けなければいけないプレッシャーを浴びて。
次第に心が捻じ曲がったようになるにしたがって、いつしか他人との距離が出来るようになった。
愛する人に嫌われたくない。
いい人に思われたい。
期待されるような人物になろう。
尊敬される男にならねば。
彩葉に執着するようになって、少しずつ自分を変えようと努力をしたけれど。
こんな風に彼女の心を傷付けてしまうなら、いい人ぶるのはもう止めた。
彩葉がいないのなら、何の意味も無い。