サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

「単刀直入にお尋ねします。彩葉は今、どこにいますか?」
「……それを聞いて、どうするおつもりで?」
「連れ戻したい所ですが、一先ず安全確保が最優先なので、それだけは……確認したいです」
「安全な場所にいますよ」
「……そうですか」
「他に聞きたいことは?」
「彼女から、『治療』に専念しているとメモがありました。俺の元を離れてまで治療に専念しなければならないほど、病状が悪いのでしょうか?」
「……医師として、放置はできないとだけお伝えします」
「っ……」

郁は拳を握りしめ、眉間には深いしわが刻まれた。

「明後日に決着をつけます。……事が済んだ暁には、彼女の居場所を教えて頂けますか?」
「勿論です。……ご連絡をお待ちしてます」
「朝のお忙しい時間に有難うございました」

郁が深々と頭を下げると、葛城はクシャっと髪を掻き乱しながら溜息を溢す。

「病状を聞かなくていいんですか?」
「……今聞いてしまったら、……無理やりにでも連れ戻したくなるので」
「………」
「それに、……彼女が尊敬する先輩の貴方だから、任せられるんです。でなければ、今すぐ……」
「……っ?!」

血が通ってるとは思えないほど、正気を失ったような瞳。
普段の凛々しい佇まいは微塵もなく、必死に理性を繋ぎ留めようとしているような……。

そんな郁の手を視界に捉え、ハッと息を呑む。
ぎゅっと握りしめられた拳から、ぽたりと血が滴り落ちた。

「遅刻しますよ?」
「え?……あ、はい」

郁は何事も無かったように車に乗り込み、その場を走り去った。

アスファルトに残る血痕。
その場に財前がいたという証拠。

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