サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
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「まさか、呼び出しに応じるだなんて、心境の変化でもあったのかしら?」
「フッ、……さぁ、どうだろう?」
財前が葛城を尋ねた、翌日の昼過ぎ。
和久井沙雪から『会って話がしたい』と連絡があり、財前は都内のホテルの一室へと足を運んだ。
部屋に一歩入った所で足を止め、壁に凭れる財前。
腕組をして、顔を僅かに傾げる。
ドアを開け、財前を招き入れた和久井は、入口で立ち止まる財前に気付き振り返った。
「いいのかしら?」
「……何が?」
「こういう所で二人きりだなんて」
「それが狙いなんじゃねぇのかよ」
「あら、やだ。そういう物言いをする人だったのね」
「手荒な真似をする女に、紳士的な態度じゃ釣り合わねぇだろ」
「ンフッ、そういうのも嫌いじゃないわ」
財前の元まで歩み寄った和久井。
綺麗な薔薇が施されたネイルが映える、白く細い指先が財前の顔へと伸びて来た。
「っ……」
「遊んでやろうか。……あぁ、そうだったな。男の俺じゃ愉しめねぇか」
財前は和久井の腕を掴み、捻り潰す勢いで握りしめる。
痛みに堪えられなくなったのか、和久井の顔がみるみるうちに歪んでゆく。
「フッ、つまんねぇ女だな」
「っ……」
財前が手を離すと、和久井は手首を摩りながら、キッと財前を睨みつけた。
財前は何食わぬ顔で部屋の奥へと足を進める。
テーブルの上には、シャンパンとそれに合わせた料理が並ぶ。
「昼からシャンパンとは、アンタも物好きだな」
「美男美女がホテルの一室で甘いひとときを過ごすなら、シャンパンくらいなくちゃ味気ないでしょ」
「美男……美女、ねぇ…」
財前はグラスにシャンパンを注ぐ。