サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
和久井はソファーに座り、財前が注いだグラスを手にする。
「話とは?」
「乾杯くらいさせてよ」
「……フッ」
財前はグラスを持ち上げ、和久井に傾けた。
和久井は財前の行動を読み解こうとしながら、グラスに口をつける。
「婚約者の彼女とは、その後、仲良くやってる?」
「話す義理はないと思うが」
「それもそうね。でも、強気な性格の女性は、意外と脆いものよ」
不敵に微笑む和久井。
それが何を物語ってるのか、直ぐにピンと来た財前は、テーブルの下で手がわなわなと震え出す。
「まるで、彼女に会ったみたいな口ぶりだな」
「えぇ、会ったわよ。正確には会いに行ったと言うべきかしら?ンフフッ…」
「っ……」
「そう怖い顔しないでよ。別に何もしてないわよ。会って、少し話をしただけ」
「……へぇ~」
「その様子だと、彼女から何も聞いてないのね」
「聞くも何も、俺達は周りに振り回されるような陳腐な関係じゃない」
「あら、……ンフッ、ご馳走様」
和久井と向かい合う形でソファーに腰を下ろした財前は、ニヒルな笑みを零す。
「望みは何だ」
「どういう風の吹き回しかしら?」
「言葉の通りだが?」
「……条件を出したら、呑んでくれるって事?」
「内容にもよるな」
「ンフフッ」
長い脚を優雅に組む財前。
踊る気泡を楽しむかのように、膝の上でグラスを傾ける。
「三か月でいいわ。……私の婚約者になって」
「……婚約」
「今下がり続けてる株も持ち直すし、破局する時の下落分は、三か月あれば手を打っておけるでしょ?」
「……フッ」
「お互いに損はないと思うけど」
「いいだろう。その代わり、明日婚約会見を開くから、同席しろ」
「ッ?!」
「何だ、嫌なのか?」
「っ……、別に、嫌なんかじゃ」
「では、決まりということで」
――――ドンッ。