サイコな機長の偏愛生活

鬱血している箇所に指先を這わせると、目の前の喉仏がゆっくりと上下した。
間近で見ると、変な妄想しちゃう。
本当に色気が駄々洩れだよ。

「今日は、時間外のオペは断れよ?」
「……はい」
「さすがに四日連続で夜勤状態だと、俺が心配で仕事にならない」
「っ……はいっ」
「それと」

急に噤んだ彼。
拘束する腕が緩やかに解かれる。
そして、ゆっくりと視線を合わせて。

「他の男と一緒に夜を過ごしてるかと思うと、腹立って仕方ない」
「っっっ~~っ」

何ですか、郁さんっ!
夜でもないのにそんなキザなセリフを…。
私の方が恥ずかしくて見悶えちゃうじゃないですか。

上気する顔を隠そうと背を丸めて彼の首に顔を埋めた、次の瞬間。
背骨の中央部分に軽い圧を感じて―――。

あっという間に弾き解かれた下着の留め金。
いつの間にか、パジャマの中に滑り込ませた指先が背中を縦横無尽に這い廻ってる。

「あと十分だけ」
「っ……、十分で終わりますかッ?!」
「フフッ、するとは言ってないだろ」
「ッ?!っっ~ッ」
「して欲しいなら、出来なくもないが、さすがにフライトに支障来しそう」
「へ?!……今日、これからフライトなんですか?」
「ん」
「海外?」
「いや、国内便の往復」
「はぁ……」

また何日も逢えないのかと思った。

「だから、帰りは少し遅くなる」
「……はい」
「先に寝てていいから」

少し低めの落ち着いた声音が降って来る。
私だけにかけられた優しい声。
仕事モードの凛々しい声も好きだけど、やっぱりこの色香を滲ませた声が好き。
それにこのシトラスの香りも。

全身で噛み締めるように堪能していると、がしっと頭が掴まれた。

「さすがに二個目は勘弁な」
「ふぇっ?……んっ!」

無意識に唇を首筋に這わせていたようで。
危険を察知した彼に防御された。

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