サイコな機長の偏愛生活



久しぶりに甘い夜を過ごした俺らは、お互いに出勤準備に取り掛かっている。

先にシャワーを済ませた俺は、彼女が昨日作ってくれた料理を温め直す。
彼女はシャワーを浴び終えたようで、微かにドライヤーの音がドア越しに聴こえて来る。

サーバーから淹れたての珈琲をカップに注ぐ。
鼻腔を擽る香ばしい豆の香りを楽しみながら、角砂糖を一つ落とし入れて。

「郁さんっ、私にも珈琲お願いします!」
「今淹れ終わったところだから、冷めないうちに」
「はいっ」

ひょっこりキッチンへと現れた彼女は、にこっと屈託ない笑顔をプレゼントして洗面所へと戻って行った。



「ギリ、隠れるラインかも……。ガーゼ、……いや、包帯でも巻きましょうか?一日解けないようにしっかり巻きますからっ」
「いや、そっちの方が返って怪しまれる。まぁ、規律違反にギリのラインだけど…」
「……ですよね」
「別に浮気したとか、不倫してるとかじゃないんだから、気にしなくてもいいだろ」
「それはそうかもですけど……」

食事を終え、出勤するために彼女にネクタイを結んで貰っている俺は、心配そうに見つめる彼女の腰を抱き寄せる。
こういう倖せな時間ほど、経つのが早くて。
一秒でも長く触れていたいのに……。

「あっ、そうだ」
「……ん?」

四日前に母親から預かったものを彼女に手渡す。

「ドレス!!」
「ん。一向に俺らが決めないから、母親が催促して来た」

挙式は来年の六月に行う予定で、既に式場は手配してある。
けれど、衣装合わせをする時間が中々合わなくて…。

「オーダーメイドだと、最低でも半年くらいかかるみたいだから、早めにデザインだけでも決めてくれって」
「……はい」

准教授査定が落ち着くまで余裕が無いのは分かっている。
けれど、結婚を先延ばしにする気は無い。
むしろ、前倒しにしたいくらいだ。

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