サイコな機長の偏愛生活



飛行高度三万九千フィートを維持していた機体が、まもなく羽田空港へと着陸態勢へと入る。

既にCAから着陸態勢に伴うアナウンスが行われ、乗客は着席し、シートベルトを装着済み。
CAは揺れに供え、座席の位置や肘掛けやカップホルダーの位置、手荷物の位置など、危険回避の最終確認を行う。

程なくして機体は徐々に高度を下げ始め、房総半島上空へと差し掛かった、その時。

財「機長より、ご案内申し上げます。気流不安定の中、高度を下げておりますため揺れが続いております。お引き続きシートベルトの緩みが無いようしっかりとお締め下さい。大きく揺れましても飛行やこの先の着陸の安全性には影響がございませんでの、ご安心下さい。万が一、ご気分の優れないお客様は、座席ポケットにございます白い袋をお早めにご準備下さい。また、ベルトサイン点灯中の化粧室のご使用はお控え下さい。…ーー…安全な着陸のため、皆様のご協力をお願い致します」

通常はCAがアナウンスするが、この先の不安定な気流に対し、かなりの揺れが予想される。
こういう時は、CAより機長からのアナウンスの方が、乗客は安心感を得られるのだ。

臨機応変の対応力。
どのタイミングでアナウンスすべきかという点に於いても、操縦士は常に気を遣う。

機内アナウンスが行われている間は、機内のモニターの映像や音量がアナウンスに切り替わるからだ。
動画を楽しんでいる乗客もいるだろう。
突然モニターが消えたら、不安にさせてしまうというデメリットもある。

それでも、第一に考えるべきは『安心・安全』だ。
揺れに供えて身構えて貰うことの方が最優先順位だということ。


財前は前方左右の雲の発達状態を見極め、出来るだけ最小限の回避飛行をし、出来る限りに機体が揺れない航路を保つ。

< 32 / 182 >

この作品をシェア

pagetop