サイコな機長の偏愛生活

言葉や態度に示さなくても、心と脳は嫉妬心で駆られているのは事実。

それでも、今彼女を抱いてしまったら、雑に抱いて痛い思いをさせてしまう自信がある。
それくらいたぶん、自制が利かなくなる。

だから、今はクールダウンする時間が必要だ。

本当は触れていたい。
例え、彼女の手足が絡みつくように体が拘束されたとしても。
彼女のぬくもりを肌で感じないと熟睡出来ない。

けれど、それさえも今は諦めなければならないほど、苛立ちが勝ってる。


静けさに包まれる寝室。
お互いの息遣いと寝具の衣擦れの音が妙に耳につく。

薄明りの中、片目を薄っすらと開けて隣りに横たわる彼女を見ると、彩葉は俺の方に体を向け、俺をじっと見つめていた。
その表情はとても儚げで……。

そんな彼女に気付いてしまえば、放置することなんて出来ない。
だって、彼女が俺に愛想を尽かして、気持ちが離れてしまう方が不安で堪らないから。

嫉妬をセーブする云々ではなくて。
彼女の心を繋ぎ留めておきたくて。

腕をそっと彼女の首の下に滑り込ませ、抱き寄せる。

「……郁さん?」
「抱き締めてないと熟睡できない」
「っ……」

彩葉が安堵したのが分かる。

そっと俺の体に回された腕。
俺の背中にぎゅっと込められた彼女の手。
胸元に感じる心地よいぬくもり。

いつだって惚れた方が負けなのは分かり切ったこと。

一カ月間だけ、勤務時間内の出来事は我慢してやる。
このやり場のない感情と折り合いつけることを。

彼女の髪からお気に入りの香りが漂い、その香りに包まれる。
あいつもこの香りを嗅いでるんだろうな……。

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