サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
久しぶりに彩葉を間近で見て堪能する。
目に入れても痛くないほど、ずっと見つめていたいと思わせる女性だ。
俺が何もアクションを起こさないから、待ち侘びた彼女が薄っすらを瞼を開けた。
「キスされると思ったか?」
「っ……」
「残念だったな」
「……っ」
煽情的な視線を向けたまま、優しく髪を撫でる。
こんなにも近くいるのに触れずにいるだなんて、出来なかった。
細く柔らかい髪を梳くように指を這わせる。
そんな俺の指先を感じているのか。
彼女は再び目を閉じた。
「仕事は休みなのか?」
「いえ、十四時まで仕事して、半休取って来ました」
「じゃあ、後は帰るだけ?」
「はいっ。先に帰ってご飯作って待ってるので、今日は帰って来てくれますか?」
「……どうしようかな」
「えっ……」
腕時計で時間を確認すると十六時になろうとしている。
酒井は二時間くらい帰って来ないと言っていたから、たぶんこの展開を先読みして、俺から『直帰していい』と言うのを待っているのだろう。
何だか手のひらに乗せられてる感満載で癪だが、せっかくだから厚情に感謝するか。
酒井に『彩葉と帰宅するから、直帰して構わない』と連絡を入れる。
そして、荷物を鞄に入れて……。
「俺も上がる」
「えっ、お仕事いいんですか?」
「あぁ、……帰るぞ」
「あ、はいっ!!」
「車で来たのか?」
「いえ、電車です」
「じゃあ、乗せてく」
「ありがとうございますっ」
彼女との関係が断ち切れる前に修復出来てよかった。
正直、もうダメかと思っていたから。
こんな予期せぬ展開になるとは思いもしなくて。
指を絡ませた先にある指輪に、全て浄化されたようだ。